2021.12.07
代替食品トレンドから考察するサスティナブル○○・エシカル消費について
欧米を中心に肉や乳製品など動物由来の食品を植物由来に置き換えた代替食品の人気が高まっています。代替肉メーカーの「ビヨンドミート(Beyond Meat)」社の場合、代替食品市場の可能性を見出し広げた企業と評価されておりますよね。日本国内にもスーパーで大豆ミートが普及していますが、海外には代替肉の他、多様な飲食メーカーが代替食品の製造に取り組んでいるようです。
進化する代替食材業界。今回はコーヒー☕
代替食品は、飲料分野でもマーケットを広げております。少し話を変えてみましょう。皆さんは「コーヒーの2050年問題」についてご存知ですか?2050年ごろには温暖化による気候変動でアラビカ種のコーヒー栽培適地が現在の50%にまで減少するという、まさにコーヒー業界に警鐘が鳴らす仮説です。それが現在進行中であり、直近では世界のコーヒー豆の4割を生産するブラジルの気候問題で国際的にコーヒー豆が値上がりしています。
また、国際コーヒー機関(ICO)統計によると日本のコーヒー消費量は世界全体の5%を占めており、EU、アメリカ、ブラジルに次いで4位のコーヒー消費国です。もし温暖化でコーヒー豆が手に入りにくくなったらどうしよう!コーヒー好きにはこれほど悲しいことはないでしょう。そこでコーヒー豆なしでコーヒーが淹れられるとしたら?しかも環境に優しく、風味さえ良いのであれば?前置きが長くなりました。最近アメリカのヴィーガン、サステナブル消費派の間には代用コーヒーの人気が浮上しております。
代用コーヒー企業の1社である米コーヒースタートアップのAtomo Coffeeは、伝統的なコーヒと比べてリソース消費量を大幅に減らした代用コーヒーを提供することで、コーヒー業界のテスラ(The Tesla Of Coffee)とも呼ばれているほどです。Euromonitor Internationalによると世界の代用コーヒー市場は2021年で約44億ドル(約5000憶円)規模まで成長しているとのこと。現在様々なメーカーが代用コーヒー分野に参入しています。
色んなジャンルに浸透しつつある「サステナブル○○」。日本の「サステナブル・エシカル消費」への認識は?
食品以外のジャンルにも「サステナブル○○」「SDGs」「エシカル消費」などの呼び方で多様なマーケティングが行われておりますよね。直近ではCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)もありましたし、年々消費者がエシカル消費に関するコンテンツに触れる機会が増えております。日経クロストレンドが発表した「トレンドマップ 2021下半期」では、経済インパクト(消費分野)でスコアを伸ばしたキーワードとして「サブスクリプション消費」を選定するほど、もはやこれらは大衆的なワードになりました。Google Trendsでも「サステナブル」と「エシカル」の検索量が増えつつあります。
若年層のエシカル消費への意識はいかがでしょう。電通グローバル・ビジネス・センターと電通総研が発表した「サステナブル・ライフスタイル意識調査2021」では、日本を含む12か国※のZ世代が「エシカル消費」に高い興味を持っていることが分かりました。今後Z世代が消費の主役になる時期には、ますます期待られるサステナブル市場です。
※日本、ドイツ、イギリス、アメリカ、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム
いまどき消費者がサステナブル○○求めるのは…?
さて、環境に優しい生き方を追求する消費者たちにアピールするにはどうすれば良いでしょう。消費者庁の2020年「エシカル消費に関する意識調査」を参考に考えてみたいと思います。先ずは、エシカル消費に対するイメージについて確認しました。
Q.エシカル消費に対し、どのようなイメージを持っていますか。(複数回答可)
エシカル消費に対するイメージは、「これからの時代に必要」が51.8%で、2016年度調査と比較すると、「これからの時代に必要」が大幅に上昇し、「よく分からない」が大幅に低下しました。「先進的」「知的」というポジティブな印象もあれば、「難しい」「値段が高い」「面倒」というネガティブなイメージも抱えていることが分かります。
また性別にみると、「女性」は「これからの時代に必要」「前向き」「優しい」などで「男性」より高くなる結果に。性年代別にみると、「男性 10 代・20代」は「先進的」が20.1%と最も高くなっている。女性 30代、40代では「これからの時代に必要」が60%を超えています。
Q.サステナブル・エシカルな商品を購入した経験がありますか。
まだサステナブル消費に触れてないが、今後機会があれば購入してみたいと回答した割合が45.7%でした。企業の立場で彼らをエシカル消費に参入させる方法はなんでしょう。ここでは「よく分からない」「難しい」「値段が高い」などのネガティブイメージを破る施策が必要かと思います。企業は「よく分からない」「難しい」について、丁寧で分かりやすいな説明でエシカル消費に参加させる意欲を浮かばせる活動が必要でしょう。また、「値段が高い」といった部分については、消費者に高品質かつ社会的に貢献しているという要素を与えるよう、商品のストーリー性を強化する施策が必要です。
例えば、前述のAtomo Coffeeは、起業した場所が「シアトル」という、サードウェーブ系カフェのメッカといった地域性を保ちながら、「コーヒー1杯を入れるまで必要なお水を94%減、CO2 93%減、材料は98%がリユースもの」といったサスティナブル性を生かし、大学でスターバックスと自社商品をブラインドテイスティングさせるイベントを開催することで「ヘリテージ」と「知的」な要素をブランドにうまく取り入れたケースでしょう。今後サステナブル業界はどんな姿で私たちの目の前に現れるのでしょうか。確かなことは、私たちの日常に長く、無駄なく、そして大切に使える、丁寧な暮らしの提供が根本にあるということですかね。
※出典① 日経クロストレンド「トレンドマップ 2021下半期」|2021.10.12
※出典② 消費者庁「「倫理的消費(エシカル消費)」に関する消費者意識調査報告書」|2020.2.28