2025.08.08
世界三大広告賞「カンヌライオンズ」に見る、いま注目の広告トレンド
世界三大広告賞といわれる「カンヌライオンズ」「クリオ賞」「The One Show」。この3つでの受賞は、広告・クリエイティブ業界における最高の栄誉とされています。
これらの広告賞では、最先端のクリエイティブアイデアや手法が数多く紹介されており、業界の最新トレンドを把握するのに最適です。
日本や韓国からも数多くの作品がエントリーされ、優れた成績を収めています。今回はその中でも、2025年6月に開催された世界最大級の広告祭「カンヌライオンズ」に注目し、受賞作品から見える最新トレンドや話題作についてご紹介します。
カンヌライオンズ2025の注目ポイント
今年のカンヌライオンズは2025年6月16日から5日間にわたり、フランス・カンヌで開催されました。広告・クリエイティブの最新トレンドが集結するこの祭典は、まさに“アイデアの見本市”です。
今年の特徴は「ユーモア」と「共感」がキーワードでした。たとえば、以下のような作品が注目されました。
キットカットの代表的キャッチコピーを、ユーモアたっぷりに再解釈した作品になります。
KitKat “Have a Break”(VML Czechia/Mindshare CZ)
表現の変化:「怒りなき時代」の到来?
特に目立ったのが、「怒りではなく共感で心を動かす」表現の増加です。
SNSのアルゴリズム進化により、ユーザーは「好きなもの」「共感できるもの」にしか興味を持たなくなりつつあります。知らない誰かの怒りやネガティブな発信は、すぐにスワイプされてしまう時代です。
そのため、感動・共感・気づきといったポジティブな感情に訴える広告が増加。SNSでのシェアをきっかけにバズり、複数部門で受賞する作品も見られました。
▶参考:AdverTimes|2025年カンヌ受賞作品まとめ
AIとの共創:道具としてのAI活用
もうひとつの注目テーマが「AIの活用」です。広告制作の現場でもAIはすでに欠かせない存在となっており、生成AIを用いた作品が数多く見られました。
カンヌライオンズでは、「AIは代替手段ではなく、共創者(copilot)として活用すべき」というメッセージが強く発信されていました。以下のような作品がその象徴です。
Pedigree社の「Adoptable」は里親を探す犬たちをAI画像生成で描いたアウトドア広告です。生成AIの力で命の価値を伝える作品として高く評価されました。
Pedigree「Adoptable」(Colenso BBDO/Nexus Studios)
日本・韓国からの受賞作品
今年も日本・韓国から高い評価を得た作品が登場しました。
以下はカンヌライオンズ、One Show、クリオ賞など複数受賞した注目のアジア作品です。
日本:電通「#2531佐藤さん問題」
社会の構造課題を浮き彫りにした問いかけ型広告です。
韓国:HYUNDAI「夜釣り」
車にカメラを取り付け、車の視点から撮影された作品です。まるでドライブレコーダー(ブラックボックス)の映像を見ているかのような感覚を与えます。
あえて限られた視野で構成された映像が、観る者に独特の緊張感を生み出しています。
広告が向かう、次のステージとは
カンヌライオンズは、世界中の広告業界関係者が注目する一大イベントです。受賞作品を通じて、最新のトレンドやテクノロジーの活用方法だけでなく、広告が向き合うべき社会課題や文化的背景まで、さまざまな学びを得ることができます。
特に今年は、「ユーモア」「共感」、そして「AIとの共創」といったキーワードが多くの作品に共通して見られました。これらは単なる一過性の流行ではなく、これからの広告に求められる本質的な視点を示していると言えるでしょう。
情報を届けるだけでなく、人の心を動かす――そんな広告をこれからも目指していくべきではないでしょうか。